八耳俊文学長 2012年度 女子短期大学入学式 告辞


八耳 俊文
青山学院女子短期大学学長
新入生の皆さん、専攻科生の皆さん、ご入学おめでとうございます。青山学院女子短期大学を代表いたしまして、心からお喜び申し上げます。ここにご列席いただきましたご家族の皆様に心よりお祝い申し上げます。
昨年3月11日に、東北地方太平洋沖地震が起き、それにともない多くの人命が失われる東日本大震災が生じました。福島第一原子力発電所では甚大な事故が発生し、周辺は放射能に汚染されました。東京でも揺れは激しく余震が続き、本学でも卒業式・入学式を中止いたしました。本日は2年ぶりの入学式となります。
3月11日当日は、首都圏の交通網が混乱し、多くの帰宅困難者が出て、青山学院もキャンパスを開放し、約9000人を迎え入れました。いま皆さんがいるここ青山学院講堂も避難所となり、一晩、1000人以上の人が過ごしました。近所で体の不自由な方もここへ避難に来られたと聞いています。それから1年余り、東京では地震のことが忘れ去られようとしています。しかし、この東京と地続きの岩手や宮城、福島の被災地はいまなお復興にはほど遠く、この時間、多くの人が傷みを抱えておられます。私は2月に本学の教員と学生ボランティア、計24名とともに岩手県の釜石と宮古の被災地に行きました。津波の被害は凄まじく、時間がとまったような何もかも無くなった風景を見て、声を出すことができませんでした。地元の人々の暖かい対応にふれ、ようやく東京に戻ったほどでした。いま私は皆さんとともに、さまざまな場所でとりわけ被災地で、挙行されている入学式で新たな門出を祝される人々のことを思います。
さて、青山学院女子短期大学は大幅な改組を行い、この4月から現代教養学科と子ども学科の2学科体制となりました。現代教養学科の新入生は第一期生となります。子ども学科の新入生も、新しく編成されたカリキュラムで授業を受けることになります。専攻科生は国文・英文・家政・教養・芸術の5学科を発展させた専攻に入るので、旧来の青山学院女子短期大学での教育を受けることになります。その一方、新しい青山学院女子短期大学で繰り広げられるさまざまな教育プログラムに出会うため、従来と新しい青山学院女子短期大学の二つを体験することになります。
今回の改組の内容は、新しい青山学院女子短期大学の姿を模索した結果、生まれたものです。
青山学院女子短期大学の歴史を簡単に説明します。なお青山学院の日本側の最初の院長で、青山学院の気風をつくるのに貢献した本多庸一先生の展示が、正門入って突き当たりの間島記念館でおこなわれています。授業がはじまってからで構いませんので、どうぞご覧になって下さい。さて、本学は1874年、明治7年、アメリカ・メソジスト監督教会の婦人外国伝道局が派遣した女性宣教師ドーラ・E・スクーンメーカー先生がはじめたChristian Girl's School 女子小学校を源流にもちます。キリスト教信仰にもとづく女子教育の学校として開始されたのです。
江戸時代、女子の中等・高等教育機関はありませんでした。明治時代になり、女子教育は官立、私立、ミッション系によって担われます。スクーンメーカー先生がはじめた「女子小学校」はその後変遷をたどり、青山女学院となり、この間、教育と学校経営の責任は婦人外国伝道局が担い、校長もアメリカ人婦人宣教師が就きました。関東大震災により青山女学院は青山学院と一体化し青山学院高等女学部となり、戦前は女子専門部、戦後は女子専門学校と改まり、1950年には青山学院女子短期大学として発足しました。今年は62周年にあたります。

1953年に発行された『青山学報』をみると「本年度入学者の3分の1は地方からの遊学者」と書かれており、女子短期大学は創設期から全国の受験生を集めていたことがわかります。2011年度入試の合格者の地区別をみても関東地区以外が4分の1を占めています。このように創立以来一貫して、本学は全国の「青山学院女子短期大学」として耀き、キリスト教信仰にもとづく教育を受けた学生を世に送り出して来ました。
私たちが考えた新しい青山学院女子短期大学の姿とは、教養教育の伝統をさらに発展させたものです。本学で学ぶ多くの人は20歳前後です。多くの短期大学や四年生大学が実務教育、専門教育を謳う中、本学が追求すべきは「教養教育」との結論に達したのです。私たちが考える姿は「学び続ける一生」です。
学ぼうとする人は豊かです。たとえ出発点は低くても、わかるのに手間取っても、長い人生、学び続ければ、学ぶことをやめた人よりはるかに充実した人生を送ることができます。皆さんにはこの「学びの構え」を本学の在学時に身につけてもらいたいと願っています。学校は学びに特化した機関です。しかし社会にもたくさん学ぶ機会はあります。卒業後、編入学するもよし、留学するもよし、自分を見続けてもよし、社会で活躍するもよし、いろいろの場で学び続けていっていただきたいのです。私たちは皆さんが何をどのように学んだのかを、10年、20年を経て再会したとき、ぜひ聞かせていただきたいと思います。
教育とは次世代へのメッセージです。私が皆さんに伝えたいメッセージは平和で希望ある社会をつくっていただきたいということです。この社会が戦いに明け暮れ人が憎み合い、生きる希望もなければ、皆さんが次の世代へと引き継ぐことはできません。人間はどの人も尊厳ある存在です。しかし世界では正当な理由もなく、存在を脅かされている人たちがいます。憎しみを煽る人もいます。このような動きに加担することなく共存に向かうべく力を注ぐことができる人になっていただきたいのです。

今回の改組にともない、現代教養学科、子ども学科ともすべての学生が「現代教養コア科目」を履修することしました。これは「女性と現代」「共生」「表現」の3群にわかれます。
「女性と現代」群のねらいは、自分を知ることです。自分がなにものか、どのような使命を果たすべく生まれてきたのか考えることは大切です。この問いを疎(おろそ)かにしてはいけません。自己を理解することは他者を理解することにつながります。これを学ぶのが「共生」群です。私がさきほど述べた「共存に向かうべく」といった目標を支える姿です。「表現」群は、発信しコミュニケートする力を養います。自分を知り、他者とつながるだけでなく、自分の内面を整え、相手に伝えることも必要です。これが「表現」群のコンセプトです。
新入生の皆さん。皆さんがどのように学ばれるかを見守り、私たちはカリキュラムをより発展させていきます。どうか皆さんが本学で「学ぶ続ける習慣」を身につけ、将来、社会のあらゆる局面で積極的に貢献する人となられることを期待します。
終わりになりましたが、もう一度、皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます。本日が皆さんのすばらしい始まりの日となることを願い、告辞といたします。ご入学、本当におめでとうございます。
2012.04.27